次世代の山づくり① たなべたたらの里 高付加価値の山づくり

自然の循環を守り、ともに生きるものづくりを目指して

「葉っぱの世紀のはじまり」を合言葉に、ユダ木工は自然の循環を守り、ともに生きるものづくりを目指しています。

国産ヒノキを使った高性能な木製玄関ドアの開発や、製造過程の環境負荷削減など、持続可能でより良い社会の実現に向けた様々な取り組みを、長年少しずつ続けてまいりました。2022年からは「カーボン・オフセット」という制度を利用して、CO2排出量の削減とともに次世代の山づくりを支援する新しい取り組みを模索しています

今年は、日本の豊かな山づくりや再造林の現状について学ぶべく、また新たな場所へと新しい一歩を少しずつ進めているところです。今回のコラムは前編・後編で、いろいろな次世代の山づくりの取り組みについてご紹介します。

 

たなべたたらの里 高付加価値の山づくり

前編では、島根県 たなべたたらの里さんが取り組まれている山づくりをご紹介します。

たなべたたらの里さんは、カーボン・オフセットでのご縁から、植林活動や山林見学などにご協力いただいています。今回も山林部のSさんとTさんが案内してくださいました。

カーボン・オフセットの取り組みについてはこちら ↓

次世代の木を育てる。カーボンオフセットがつなぐ、山を愛する人と人

早く育つ木 早生樹林業の実験

昨年ユダ木工社員一同でヒノキの植樹をさせていただいた山とは少し離れた、別の山へ伺いました。こちらの山でも若い木がたくさん育っています。

山を案内する、たなべたたらの里 山林部のSさん

▲ 山林部のSさん

「たなべたたらの里では、森が最大限に生きるように、付加価値の高い山を作る研究をしています

ここで育っている木は桐(キリ)の早生樹。早生樹とは、成長が早い木のこと。この桐の木は通常の桐よりも早く大きく育ち、7年で伐期(※)をむかえます。
※伐期:伐採適齢期。一般にスギ・ヒノキなどは約40年、広葉樹は25年~。
 
「新しいチャレンジなので、様々な課題があります。苗木をウサギが食べてしまったり、台風で倒れて途中で曲がってしまったり… こうして実験しながら、模索しています」

支柱で支えられている桐早生樹の幹。中腹で曲がっている

▲ 台風で倒れたのち助け起こされた痕跡が、木に表れている

 

樹種の組み合わせで生まれる、山の新しい利用価値

「従来では、林業といえば建築用材等で使われるスギ・ヒノキがメインでした。しかし、スギ・ヒノキだけが森林というわけではありません。今、複数の樹種を組み合わせる林業の研究もしています」

クヌギと南天、二種類の木が育てられている山を案内していただきました。

山の風景 遠くでスタッフが植林作業をしている

このエリアでは、まず南天が3年で育ち、南天の赤い実がみのります。南天の枝はその後毎年収穫して、正月飾りとして出荷できます。同じ場所で、クヌギが8年かけて育ちます。クヌギは刈って椎茸木として出荷します。そしてクヌギの切り株からは新しい芽が生え、また育っていきます

「広葉樹には、切っても自力で再生するものがあります。切り株から芽が出て、また新しい木に育つのです。これを『萌芽(ぼうが)更新』といいます」

Sさんが現在構想しているのは、ヒノキとサカキの組み合わせ。ヒノキが60年かけて育つ間に、サカキが10年で育ちます。サカキは刈ると萌芽更新で再び育つので、また10年後に刈ることができます。ヒノキの成長を待つ60年の間に、サカキを何度も出荷することができるのです。

針葉樹の古い切り株が緑で覆われている様子

 

豊かな山林を育むために 林業の力

「萌芽更新も万能ではありません。歳を取り過ぎた木は、切っても芽が出ないのです。今、山が高齢化しています。また、ヤブ化して野イバラが生えてしまっているような山では、木が育ちません。これらの山を放置していても、豊かな森にはならないのです」

「どの取り組みも前例はありませんが、やってみないと分からない。新しい山のサイクルをつくり、新しい山の価値を生み出したいと思っています」

Sさんが案内してくださる山はいつも、構想されている夢で輝いているように感じられます。きっと次世代に引き継がれた将来でも、美しい山に育っていくのだろうと思います。

大きな木の下の草地を歩いて登るユダ木工新入社員たち

今回の山づくり勉強会にはユダ木工営業部・製造部の新入社員も参加し、山づくりの苦労と新しい挑戦について学びました。ユダ木工の木製ドアづくりは、木製ドアご愛用者さまはもちろんのこと、山づくりに携わる林業者の皆さまとも、ともに歩んでいきます。

たなべたたらの里・井上副社長とユダ木工代表・湯田

▲ たなべたたらの里 井上副社長(写真右)とユダ木工代表 湯田(左)

今年もカーボン・オフセットを実施しました。昨年に続き、ユダ木工が仕入れているヒノキ丸太と同数のヒノキ苗木費用分、オフセット・クレジットを購入いたしました。

後編では、地元 広島県での山づくりの取り組みをご紹介します。

 

取材協力

たなべたたらの里 様
https://tanabetataranosato.com/