森を守り、暮らしに生かし、木と共に生きる。ユダ木工は木製ドアづくりを通して、持続可能で豊かな社会の実現を目指します。そして、次世代の山づくりを支援する新しい取り組みを模索しています。
いろいろな「次世代の山づくり」をご紹介するシリーズとして、前回のたなべたたらの里さんに続き、今回は地元 広島県の「広島県西部地区森林再生協議会」での取り組みをご紹介します。
これからの林業を考え、支援する
「広島県西部地区森林再生協議会」は、木材の生産・流通・加工に関わる事業者によって設立された会です。再造林費用を皆で少しずつ負担する仕組みによって、次世代の山づくりを支援されています。
ユダ木工もこの仕組みに参加できないかと考え、森林再生協議会のKさんにお話を伺いました。
山の少子高齢化
今問題になっているのは、今後日本の山には超高齢樹が増えていく一方、若い木が減っていくということです。
日本の山の約半分は、戦後植林されたスギやヒノキの針葉樹林です。しかしその後、輸入木材が沢山使われるようになり、地域の木を使い、植え、育てる、というサイクルが十分に行われなくなりました。結果、今の山は「少子高齢化」ともいえる状態になっているのです。
・荒れた放置林の問題
・土砂災害リスクの増加
・CO2吸収量の低下(※若い木ほどCO2を多く吸収する)
・花粉増加
など、沢山の問題を抱えています。未来の豊かな山を守っていくために、私たちがもう一度力を合わせて次世代の山づくりに取り組んでいく必要があります。
山は水資源にも密接に関わっていて(水源涵養機能)、私たちの暮らしに欠かせない重要なインフラの一つですね。
林業の改革
再造林が進まない理由として、林業者の負担が大きいことも問題ですが、もう一つ大きな問題があります。それは山林の所有形態があまりにも細かすぎることです。
ひとつの山の中で、土地の所有区分が細かく分かれている場合があります。所有者の許可なく伐採や整備をすることはできません。土地の境界や所有者が不明なために放置されてしまっている山が、沢山あるのだそうです。
山の土地が「あまりにも細かすぎる」状態に分かれているのは、どうしてなのでしょうか。
かつて、地域住民の共有資源として利用されている山がいたるところにありました。炭・薪など様々な生活用品を山から得ていた時代のことです。
明治時代頃に、土地の所有権を明確化する取り組みがなされました。そのため、日本の山は「どこからどこまでが誰の山」というのが非常に細かく決まっているという特徴があります。これらの山の再造林をするには、土地の調査からはじめる必要があるのです。
そこで、林業にかかる費用の支援だけでなく、林業の改革のためのより広い支援が、国をあげて始まっています。
所有者が分からない山を含め、今、放置されてしまっている沢山の山があります。まずは林業に適した山を見極め、林業地を絞る。そして、林業地以外の山は針広混交林(※)に移行させる。そうした計画のもと、全国各地で取り組みが進められています。
※針広混交林:針葉樹と広葉樹が共存する森林のこと。
広島県西部地区森林再生協議会の取組
森林再生協議会は、木材の取引量に応じた金額を再造林費用として還元する仕組みを構築しています。木材の生産・流通・加工業者や、チップ製造・バイオマス発電業者等、木材の流通に関わる団体・事業者が、皆で林業を支え合う仕組みです。
ユダ木工がこの仕組みに参加する方法についてご相談した結果、この度、新しい枠組みとして「木材需要会員」が創設されました。
「木材需要会員」の新設によって、より消費者に近い事業者が参加できるようになりました。これまでは木材流通の「川上」のものだったこの取り組みが「川下」まで広がることで、より沢山の人が少しずつ助け合えることと思います。
そして、こうした取り組みが他の地域へも広がれば、もっともっと沢山の人で力を合わせて、私たちの山づくりを少しずつ支えていくことができるのだと思います。